「ルビコン・トレイル」とはネバダ州からカリフォルニア州へと続く難攻不落の悪路で、ここでは季節を問わずオフロード車の走行テストが行なわれている。いわば4WDの聖地とも呼べるその名を冠したルビコンの試乗には、やはりオフロード専用コースが相応しい。
選ばれたのは富士ヶ嶺オフロード。国内屈指の難コースで、ルビコン・トレイルとまではいかないものの、関東エリアでは名の知れた老舗コースである。しかも取材当日は梅雨の合間の曇天で、部分的に泥濘が残るコンディション。まさしくルビコンの走行性能を測るには絶好のステージといっていい。
まずは副変速機を「4ℓ」にシフト。これでロックトラックフルタイム4×4システムによるクロールレシオは79・2:1に設定される。では全域この状態で走ってみよう。
モーグルと呼ばれるコブを走破するコースでは、本来コブを降りた時にその車輪と対角線をなす前(または後ろ)の車輪が大きく地面から離れるのだが、長いルビコンのサスペンションストロークは、ほとんど路面から離れない。さすがオフロードに特化したオフロード走破性能を持つジープ・ラングラーだと実感。
続くバンクのあるコースでは車体の傾きが25度になるところまで試すことが出来たのだが、こんな状況でも安心して走行できるのは、ルビコン本来の実力に加え、装着されたマッドテレーンタイヤの効果によるところも見逃せない。車体が25度を超え傾いても、路面をしっかりと掴んで離さないのである。過去に同じ場所でオールテレーンタイヤを装着したオフロード車で走行した経験があるが、その時にはずるずると重量の重いフロントから下にずり落ちていったものだ。
続いて山の中に分け入ってみよう。ここではヒルディセントコントロールで設定スピードを時速3㎞/hに設定したのだが、一切の不安を感じることなく正確に設定スピードを保ったまま急坂を下ってくれる。驚くほどの安心感だ。
さらに荒れた路面の急勾配に移動しアクセルを踏んでみた。しかし今回走ったコースほどのオフロードであれば、ルビコンにとっては朝メシ前。涼しい顔で駆け抜けてしまった。
なるほどタフなオフロード性能の源となる強靭なサスペンションの力強さに偽りはない。たしかに「ルビコン」は特別なジープ・ラングラーであった。その事実を体感させてくれた試乗であった。
RUBICON Impression
4WDの聖地「ルビコン・トレイル」の名を冠したシリーズ最強のジープ・ラングラー。ここまで読んでいただければ車両の概要に関しては理解いただけたと思う。それでは実際に走ったらどうなのか? ノーマルのラングラーとどう違うのか? ここでは国内屈指の難コース「富士ヶ嶺オフロード」をステージに選び、実際にルビコンを走らせてみたのだが……
Photo:伊勢馬場健次