大径タイヤ装着の基礎知識
ジープのドレスアップ&カスタムで、もっとも基本となるメニューといえばタイヤ&ホイールの選択。そう、“でっかいタイヤ”を履くことでこそ、ジープの本能は覚醒するのだ!
ジープ本来の性能を大径タイヤで取り戻す!
では、何故にジープの本能覚醒のため、でっかい大径タイヤが必要なのか? まずその第1はルックス、つまり見た目だ。
JKにしろ、TJにしろ、ノーマルの姿はご存じだろう。このクルマはシャコタン? と思うばかりに、とくに下半身が貧弱だ。そう、それは装着タイヤが不釣り合いに小さいため。これは燃費への配慮や、ごく一般的なユーザーが安全にドライブできるための配慮だが、はっきり言ってジープ本来の姿とはほど遠い。
そこで、大径タイヤに履き替えると(サスペンションのリフトアップも必要だが)、ボディとシャシーのアンバランス感が解消し、よりカッコよく見えるってわけだ。また、大径タイヤは走りのグレードアップに直結する。大径化によって最低地上高はより稼げるし、対地アングルや障害への乗り上げ性能も向上する。これがジープ本来のあるべき姿だろう。
ただ、燃費が悪化したり、大径になる分、エンジンパワーや駆動系ギア比とのバランスが崩れたりと、そこには多少のデメリットも生じる。一定以上の大径サイズを履くとなると、サスペンションの大改造も必要になる。しかし、タイヤを大きくすることは、それを補ってあまりある満足感が得られるはずだ。ここからはサイズ別、大径タイヤ履きこなし術を考えていくぞ。
タイヤのサイズ/種類/選び方
MT、AT、HT……自分の走りで選びたいタイヤ種類とサイズ
“大径タイヤ”といっても、ちょっと漠然としすぎている。ここではジープにふさわしいタイヤの種類、サイズを考えてみよう。
まずタイヤの種類だが、ジープのようなオフロード4WDの場合、オーナーの指向、重要視する走りのフィールドによってさまざまな種類のタイヤを選ぶことができる。
代表的なのはMT(マッドテレーン)。泥や岩などハードなオフロードに向いたタイヤで、荒々しいトレッドデザインは、ワイルドなドレスアップにもぴったり。海外製のトラクションタイヤなら、さらにアグレッシブなルックスのものも用意されているのでチェックしよう。
また日常ユースの快適さなら、AT(オールテレーン)がオススメだ。オフロード性能もそこそこ、オンロード性能も高く、その名のとおり全天候型、オールラウンドに使える。中には荒々しいデザインのものもあり、ドレスアップ効果も発揮してくれる。
さらに、オフロード4WD用タイヤには、HT(ハイウェイテレーン)というオンロード指向の強いタイヤも選べるが、これはジープにはちょっと不向きかもしれない。
さて、こうした各種タイヤの特徴を理解したら、今度はサイズの選択だ。詳しくは次のページから説明していくが、まずはサイズ表記の読み方は覚えておいてほしい。右下の囲みで紹介したのがサイズ表記で、上(35×12.5R17)を「インチ表示」、下(265/60R18)を「ISO表示」という。サイズ選びで大事なのは、まず外径だが、ISO表示では表記されないので注意。その場合、カタログなどのサイズ表でチェックしてみてほしい。
タイヤ選びの最初のポイントは、まず外径。TJの純正は外径28インチ(720㎜)、JKは32インチ(815㎜)相当。大径タイヤは、これより大きなタイヤという意味だ。
エントリーサイズ31〜33inch
ノーマルサスでも履ける!1サイズ上を狙え
フェンダークリアランスが大きいため、ジープは足まわりがそのままでも、1サイズアップくらいのタイヤなら履ける! 手軽でローコストなカスタムアップなのだ。
TJ、JKとも目安は純正外径+1インチ
一般の4WD車ならたいていの場合、大径タイヤを履くためにはリフトアップなど、サスペンション系のモディファイが同時に必要になるのが普通なのだが、ジープの場合、その大きなフェンダークリアランスが幸いして、さほどの大径化でなければそのまま履けてしまうことがある。
ちなみに、純正サイズはTJの場合、外径720㎜=28インチ、JKは815㎜=32インチ。それよりひとまわり……1〜2インチ大きくても装着は可能だ。
具体的に、TJなら外径29〜30インチ(30×9・50R15、225/75R16など)が無理なく履けるサイズだろう。これくらいなら金属チェーンの装着もOK。ただしそれ以上、31インチより大きくなってしまうと、リフトアップが必要になってくる。
一方、JKは純正サイズ自体が32インチとかなり大径なので、TJでリフトアップが必要なサイズでも、ノーマルのまま履けてしまう。ただ、気をつけたいのはホイールサイズの選択で、ブレーキが大型化したため、現行型(3・6Lエンジン搭載車)は17インチ以上のリム径のものしか選ぶことができない。初期モデル(3・8L搭載車)は16インチ以上が可能なので、選べるタイヤは多いはずだ。そこで具体的なサイズを選んでいくと、現行型は265/75R17、285/70R17くらい。初期型はそれに加え、285/75R16といったところだろうか? もちろん、実装着にあたってはタイヤ幅などにも注意。以上のサイズはあくまで目安にしてほしい。
ジャストマッチサイズ35inch〜
ほどよいリフトアップで、JKにジャストマッチ
35インチクラスとなると、まずTJには荷が重いことを念頭に。だが、JKにとってはもっともターゲットになるサイズ。サスペンションも最小限のカスタムでOKだ。
USスタンダードのサスキットとも相性◎
まず、TJラングラーの場合だが、35インチ……いや、33インチ以上の大径タイヤとなると、なかなか荷が重い。装着のためには大がかりなサスペンション・モディファイ(6インチアップ以上)が必要になり、そうなると、同時に駆動系やボディにも手を加えなくてはならなくなる。コストのアップや構造変更など、敷居はグッと高くなってしまうのは覚悟しておこう。
一方、JKラングラーにとって33、35、36インチ径タイヤというのは、もっともターゲットにしたいサイズだ。サスペンションのモディファイは必要になってくるが、それでも2インチアップ程度で済む。これくらいならコイルスプリング&ショックアブソーバーの変更と、ラテラルロッド延長&角度補正など比較的シンプルなメニューでOK。たとえば、35インチタイヤ(外径、約890㎜)を履いたルックスは、インパクト強し。コストパフォーマンスに優れたカスタムと言えるだろう。
また、ジープの本場、USパーツでもっとも一般的な「4インチアップ・サスペンションキット」との相性の良さも、このサイズのタイヤの特徴と言える。35インチを組み合わせれば、下半身のどっしりした、ワイルドかつ安定感のあるフォルムを作ってくれること間違いなし。オンロードはじめ、オフロードの走破性が向上するのは言わずもがなだ。ただ、ホイールオフセットによってはオーバーフェンダーの拡幅の必要もあるので、装着に際してはショップなどに相談してほしい。
エクストリームサイズ37inch〜
見える世界が違う別次元の走りが現実になる!
35インチ以上のタイヤを履くには、TJは難しいし、JKでもかなり手の込んだモディファイが必要になる。しかし、大きなロックも平らに見えるほど、次元の違う走りが!
リフトアップ量は6インチ以上が必須だぞ
35インチ……外径900㎜以上のタイヤを履かせるとなると、さすがにフェンダークリアランスに余裕のあるJKでも、手の込んだサスペンションモディファイが必要になる。リフトアップ量は6インチ以上が必須。となると、スプリング&ショックアブソーバーの交換はもちろん、アーム類のロング化、あるいはサスペンションレイアウト自体を変更するメニューも考えられるだろう。さらに駆動系……プロペラシャフトの延長なども必要だ。
そして場合によっては、トランスファーやファイナルなどギア比の見直しも行いたいところ。たとえば、37インチ径のタイヤと純正タイヤでは外周で約16%も差がある。これがエンジンパワーへの負担を増加させ、ギア比のマッチングも狂わせてしまう。つまり、駆動系がノーマルのままではスムーズな走りができなくなってしまうだろう。極端なタイヤの大径化では、このあたりのデメリットをしっかり認識しておく必要がある。
一方、もちろん大径タイヤには大きなメリットもある。37インチを履けば最低地上高はノーマルより130㎜も高くなるし、それだけ対地アングルも稼げる。また、転がり径が大きいから岩やギャップへの乗り上げ性能も飛躍的に高められる。さらに、このくらいのサイズとなると、選べるのはMTタイヤかトラクションタイヤくらい。それだけオフロードでのトラクション性能も向上する。これは、純正とは完全に異次元の走りの世界。それはまさに、エクストリーム・ジープの領域なのだ。
TEXT:高坂義信