アメリカ・ユタ州“モアブ”の旅
極上のロケーション、最高の仲間たちとジープの聖地を颯爽とコンボイ走行
「本場アメリカのデザートを思いっきり走破したい」。それは、ジープオーナーなら誰しもが思うこと。それが、ジープの聖地と言われる「モアブ」であればなおさらのことだろう。今回、AEV社が企画したモアブツアーに参加したので、その模様を紹介しよう。
これから乗り込むJKは、細部にわたってしっかりとモディファイが施されていた。
チューナーとしての実力をいかんなく発揮するAEV社
アメリカではジープのカスタムパーツは数多く存在するが、その中でもおなじみのAEV社(American Expedithion Vehicle)が、各国代理店を集めてSEMAショーの後にモアブツアーを開催した。ツアーの目的は、各代理店間での親交を深め、情報交換を行い、AEV製品の商品知識を高めるとともに、AEV社の製品が本格オフロードでどの位の性能を発揮するかを実感するためであった。
アメリカ・モンタナ州のミズーラ市に本社を置くAEV社は、ジープラングラーやダッジラムのカスタムパーツ製造メーカーで、HEMIエンジンやJKラングラーをトラック化できるブルートキットを販売しているチューナーメーカーである。創業当初は10人程度だった従業員が、現在では100人以上になっており、4WDメーカーにしては会社の規模も大きい。
社長のデイブ氏は、LJラングラーがクライスラー社より正式に販売される6年前の1998年に、TJラングラーをロング化した「AEV112」をSEMAショーに展示したことで、多くのジープ開発者たちに衝撃を与えた。「AEV112」が後のLJラングラーの礎となったことは言うまでもない。TJラングラーをロングストレッチ化した「TJ AEV112」を展示したことで、ARB社自身もその年の最優秀デザイン賞を受賞している。
ARB社が受賞したことで、AEV社の名前は一躍有名になり、前述したLJラングラーの開発にも影響を与えていく。現在、AEV社はジープJKラングラーとダッジラムをメインとし、HEMIエンジンやブルートキットなど、チューナーとしての実力をいかんなく発揮。米国クライスラー社からの信頼も厚く、最近だと、限定車のポーラーエディションのボンネットを自社生産にて供給していたことが記憶に新しい。
「モアブ」は多くの愛好家が訪れるジープの聖地
さて、アメリカのユタ州に位置するモアブは5000人の小さな都市だが、アーチーズ国立公園やキャニオンランズ国立公園が近くにあり、観光地化されている。毎年、モアブを舞台に開催されている「ジープ・イースター・サファリ」には、多くのジープ愛好家がこの地を訪れており、まさにジープの聖地といっても過言ではない。ジープ・イースター・サファリは来年50回目の節目に当たる。2016年3月19~27日の間、開催予定のようだが、相当な盛り上がりを見せることは間違いない。
2015年11月2日~6日まで開催されていたSEMAショーの後、AEV社に合流しモアブまで連れて行っていただいた。11月7日は、朝8時にAEV社がSEMAショーのために借りているレンタルハウスへ集合し、22歳のカイル氏の運転でモアブへ向かった。
日本の他にも、南アフリカ、イスラエル、ドイツ、イギリス、アメリカ・カリフォルニアなど各地から集まった。会話はすべて英語のみだが何とかなった。ラスベガスからアメリカ国内の国道15号線に乗って北へ上っていく。途中、セントジョージタウンで休憩を挟んだ。ここではガソリンを補充するとともに、ランチを食べにレストランへ。メキシカン系のチェーンレストラン「CAFE RIO」は、ボリュームはすごいが、野菜も豊富にとれて体にうれしい食事内容だった。 その後、再度、国道15号〜国道70号〜国道191号を通り、ラスベガスを出発してから約6〜7時間でモアブに到着した。アメリカではガソリンタンクを積んで走る人が多いのに気付かされるが、実際にアメリカで長時間走ってみると、ガソリンタンクの必要性を再確認できた。途中、「EARLY CASTLE VALLEY」や「GREEN RIVER」に立ち寄ったが、そこからの景色は最高だった。 ディナーは、ビール醸造でオリジナルビールの製造販売もやっている「Moab Brewery」でいただく。ここはモアブでも有名な繁盛店で、少し待たされたが箱が大きいので回転が速く10分位で入店ができた。モアブでオフロードコースを走ったら、帰りにぜひ寄っていただきたいお店で、店内にはダミーラングラーも展示されていた。お店の人いわく、ここはモアブで1番ホットでサービスが良く、料理の味もグッドテイストとのこと。オフローダーたちは必ず立ち寄っていく名物店らしい。滞在中は2回訪問したが、いずれも大満足で、店員さんのサービスもノリも最高だった。
大自然とジープが最高の瞬間を切り取る。
レンタルジープは本格的にオフロードを走れる仕様だ
モアブではジープのレンタルショップが用意されている。それも、ノーマル車はなく、すべてリフトアップしたクルマで、本格的にオフロードコースを走れる仕様になっている。やはり、現地でのジープのレンタルが手っ取り早いだろう。参考までにレンタルした際の費用とレンタル車両の基本装備を紹介しよう。なお、レンタルジープはオートマのルビコングレードのみで、デフロックがついているものしかなかった。レンタルショップのお兄ちゃんいわく、モアブではデフロックのついていないラングラーをレンタルする人がいないらしい。
●レンタル車両
①3インチリフトアップ
②33インチ~35インチ外径のオフロードタイヤ装着
③バンパー類、アンダーガード類装着
●料金
24時間レンタルで295ドル~(2ドア、4ドア同一料金)。同じクルマを何日かレンタルする場合は少し安くなるので、お店で確認してみるとよいだろう。
今回、リサーチに協力いただいたレンタルショップは「Barlow Adventures」というお店だが、ほかにもレンタルショップはあり、街を歩いていると普通に表に置いてあるので、モアブの街並みを眺めながら偶然、遭遇した1台をレンタルしてみるのもよいだろう。また、初めて行く場合は特にガイド付きのツアーに入ることをお勧めする。ちなみに、ガイド料は丸1日500ドルが相場らしい。ジープ以外にも、マウンテンバイクやバギーのレンタルもあり、家族で楽しめることは間違いないだろう。
コンボイが進む姿を男たちはしっかりと脳裏に焼き付ける。
それぞれに特徴のある4つのコースがラインUP
モアブインフォーメーションセンターでオススメの4つのコースがあるので、簡単に紹介したい。
①Chicken Comers(チキン・コマース コース)/映画の翻訳風に訳すと「チキン野郎」というのが正しいのだろうか。このコースはジェミニコースの次に簡単らしいが、けっこうハードなコースらしい。最短時間は約3・5時間。
②Gemini Bridges(ジェミニ・ブリッジ コース)/訳すと「双子橋コース」。このコースは4つの中で1番簡単なコースとされている。このコースは初心者向けらしい。最短時間は約2・5時間。
③Poison Spider Mesa(ポイズン・スパイダー・メサ コース)/これは訳さない方が格好いいだろうが、訳すと毒蜘蛛台地のコースになるか。コース間の走行距離は約16マイル(約25・6㎞)。最短時間は約4時間。
④Moab Rim Trail(モアブ・リム・トレイル コース)/これも訳さない方が良いだろうが、訳すとモアブのふち(へり)を通るコースといったところか。コース間の走行距離は約7マイル(約11・2㎞)。最短時間は約1・5時間。
ハプニングこそ最高のスパイスだ!
途中、レンタルしたJKラングラーのフロントアクスルジョイントがポキッと折れたこともあった。とりあえず走れるように修理を行う、カリフォルニアで4WDショップを経営しているクリス・ジョンソン社長
総距離約4・9マイルのコースを世界の仲間と走破
今回、お世話になったホテルは、「Best Western Greenwell Inn」。部屋はきれいで、朝食は出来立てのホットケーキが食べられ、コーヒーは24時間飲み放題だった。受付の女性も対応が良く、カードキーを紛失し部屋に入れなくなった時も即、対応してくれた。
朝9時にホテルから近いスーパーマーケット「City Market」に集合し、昼食を購入。サンドイッチをここで購入し、山の上で景色を見ながら食べる計画だった。このスーパーマーケットにはスターバックスが入っており、少し肌寒かったのでホットコーヒーを飲みながらその日のスケジュールをチェック。近くにスタンドもあり、ガソリンの補充も可能だった。
一緒に行ったデイブ氏、ゲイリー氏は共にイングランドから来ており、デイブさんは現在、アメリカワシンントンで4WD走行のインストラクターをしているらしい。とにかくよくしゃべる、陽気なイングランド人だ。ゲイリーさんは家族、子供、そして友人を大切にしている素晴らしい父親だ。
「SAND FLATS 4×4 TRAILS」のコースの総距離は約9・4マイル(約15㎞)だ。入山する前に「Sand Flats Entrance Station」があり、そこで10ドルを支払う。Receipt(領収書)をもらって、2日後にもう1回入る時に見せたら、そのまま再度入山が可能だった。「SAND FLATS 4×4 TRAILS」に入る前の入口でクルマを止めて、空気圧を調整する。大体の人は空気圧を約1・4~1・6kpaにしていたが、中には1・2kpaまで下げている人もいた。
コースに入る前に注意ポイントを教えていただく。基本的なことだが、コースを進んでいき、登っていくポイントに出くわしたら、前のクルマが完全に登りきるまでそのポイントに入っていかないようにとのこと。登りきれずにそのままバックしてくることがよくあるんだとか。
というわけで、数日間にわたって思う存分にジープの聖地「モアブ」の大自然とジーピングを堪能した今回の旅であった。また、あらためてジープの魅力を再認識した次第だ。AEV社の思惑は的中し、最後は各ディーラーの心が1つになったのであった。
MOAB TOUR
PHOTO & TEXT:松代祐樹(リンエイ)